そもそも反射とは?
筋や関節、皮膚などの末梢からの感覚入力が、脊髄内の神経回路を介して定型的な運動を引き起こすとき、これを脊髄反射(spinal reflex)といいます。
脳でのプログラミング無しに運動までを引き起こすもので、防御的、逃避的な反応とも見てとれます。
伸張反射
伸張反射とは、筋を引き伸ばすと伸ばされた筋が収縮する反射のこと。このとき、拮抗筋は弛緩します。
代表例:膝蓋腱反射
ハンマーで叩くことで膝蓋腱が急速に伸ばされます。
これを筋紡錘が感知し、伸ばされすぎて切れないように筋が短縮位になる。
これが伸張反射です。
筋の伸張を筋紡錘が感知すると、Ⅰa群線維が脊髄へ伝えます。
Ⅰa群線維は、脊髄内でその筋を支配する運動ニューロンに直接シナプス結合し、これを興奮させます。そして、運動ニューロンの興奮はα線維により筋に伝えられ、伸ばされた筋が収縮する。
この仕組みのことを、自原性興奮といいます。
また、この反射はただ1つのシナプスを介するため、単シナプス反射といわれます。2つ以上のシナプス接続を介す反射は多シナプスと呼ばれます。
ちなみに、この時の「筋紡錘→Ⅰa群線維→α運動ニューロン→骨格筋」の経路を反射弓と呼びます。
この時、Ⅰa群線維は側枝を伸ばし、抑制性介在ニューロンを介して拮抗筋のα運動ニューロンの抑制も同時に行われます。これによって拮抗筋は弛緩するのです。
この仕組みのことを、相反性抑制といいます。
(人体の正常構造と機能 より引用・改変)
筋紡錘
筋紡錘は筋繊維に平行に走る錘内筋繊維の束からなります。
Ⅰa群感覚神経は錘内筋繊維に一次終末を形成し、筋の長さと伸張速度に応じて興奮します。
長さを感知するものなので、線維と平行にあります。
長さを感知するものなのでユルユルにたわんでいたら感知できません。
Ⅱ群線維は二次終末を形成し、筋の長さに応じて興奮します。
筋紡錘の錘内筋繊維は脊髄のγ運動ニューロンの支配を受けており、これによって筋紡錘の感度が調節されます。
γ運動ニューロンが興奮すると、両端の錘内筋繊維が収縮し、筋の伸展を感知する筋紡錘の中央部は引き伸ばされることで、検出感度が高まります。
(人体の正常構造と機能 より引用・改変)
自原性抑制
筋の収縮に対して関節が動かないよう固定すると、関節運動が起こらず筋の張力だけが大きくなります。
この状態で収縮しすぎると張力がどんどん上がって「このままじゃ肉離れおこすよ!」てことで動作筋が弛緩し、拮抗筋が収縮します。
これが自原性抑制(ゴルジ腱器官反射)です。
ゴルジ腱器官は筋と腱の移行部に存在し、張力を感知します。
外力や筋収縮によって腱が引っ張られると興奮し、それをⅠb群線維が脊髄へ伝える。
Ⅰb群線維は脊髄内で抑制性介在ニューロンに接続し、抑制性介在ニューロンはこの筋の運動ニューロンを抑制する。
その結果、張力のかかった筋が弛緩する。
Ⅰb群線維は同時に興奮性介在ニューロンをも興奮させる。
興奮性介在ニューロンは拮抗筋の運動ニューロンを興奮させ、拮抗筋を収縮させる。
この反射は、筋にかかる張力を一定に保ち、過度の張力がかかるのを防いでいる。主に伸筋からの入力により、伸筋の弛緩と屈筋の収縮が起こる。
2つの介在ニューロンに接続するため、この反射は単シナプス反射ではなく、2シナプス反射です。
(人体の正常構造と機能 より引用・改変)
屈曲反射と交叉性伸展反射
皮膚に侵害刺激が加わったときに、肢を引っ込めて刺激を避けようとするのが屈曲反射です。
また、この時、反対側の下肢は身体を支えるために伸展します。これを交叉性伸展反射と言います。
侵害刺激は、皮膚の侵害受容器や関節・筋の高閾値機械受容器によって脊髄へ。
脊髄内では、いくつかの介在ニューロンを介して、刺激側の複数の屈筋の運動ニューロンが興奮し、複数の伸筋の運動ニューロンが抑制されることで回避肢位をとります。
反対側では、伸筋の運動ニューロンが興奮し、屈筋の運動ニューロンが抑制されて、肢が伸びて体重を支え姿勢を維持できます。
(人体の正常構造と機能 より引用・改変)
国家試験問題にチャレンジ!
では、これらを踏まえて反射に関する国家試験過去問題を解いてみましょう。
2シナプス反射はどれか。
- 屈曲反射
- ゴルジ腱器官反射
- 伸張反射
- 腹壁反射
- 瞬目反射
単シナプス性伸張反射の求心路を形成する神経線維はどれか。
- α線維
- Ⅰa群線維
- γ線維
- Ⅱ群線維
- Ⅰb群線維
伸張反射の反射弓を構成するのはどれか。2つ選べ。
- Ia群求心性線維
- Ⅲ群求心性線維
- Ⅳ群求心性線維
- α運動線維
- Ib群求心性線維
わかりましたか?
ここまでに説明したことが理解できていれば、簡単な問題だったと思います。
もしわからないことがあれば、気軽にコメントしてくださいね。
まとめ:なぜ反射が必要なのか理解しよう
「腱を叩くと伸張反射が起きる」と、ただ覚えてしまっても、大きな問題はありません。
しかし、なぜ人間の身体に反射が必要なのかを理解すると、絶対に忘れない知識になります。
上記していた反射の図を書いてみるのも良いかもです。
反射が必要な理由と、そのメカニズムを覚えて国家試験に活かしましょう。
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