今回は、神経系モビライゼーションの知識で末梢神経を診る【導入編】の続編として評価について書いていきます。
神経系モビライゼーションというコンセプトでは評価に用いる操作として、神経動力学検査(ニューロダイナミックテスト)といった手法を用います。
今回はそれを中心に紹介していきます。
神経の貸し借り
評価の実際に入る前に、神経の滑走について復習しましょう。
ポイントとして神経のつながりを意識すること。(脳から足先の末梢神経まで一本)
さらに滑走することで緊張が加わった部分への神経の貸し借りが起こるという見かたが重要です。
(「クリニカルニューロダイナミック」より引用・改変)
神経の伸張と運動順序
神経組織の伸張は運動の順序に影響されます。
そのため、運動の順序を変えることでストレスをかける部位を変化させることができます。
最初に動かした部位(上のSLRの図だと股関節ですね💡)で大きな伸張が起こり、その領域の局所的な反応が大きいです。
ちなみに、脊柱の動きに伴う神経の貸し借りは最も動きのあるC5-6とL4-5方向への収束として起こるといわれています。
「クリニカルニューロダイナミック」より引用
ニューロダイナミックテストとは…
「神経系の機械的、生理的事象を起こす一連の身体運動」
によって情報を得るというメソッド。
誤解を恐れずに大雑把に言うと、
神経のつながりを意識しながら、関節運動などを介して神経にテンションをかけたり、緩めたりして反応をみる評価方法です。
機械的事象とは、緊張・圧迫・滑走などであり、生理的事象とは、血流変化やそれに伴う過敏性・炎症性の反応などのこと。
ニューロダイナミックテストの手技の詳細はリンクから見てください。
ニューロダイナミックテスト
ニューロダイナミックテストでは症状が誘発されるかや、関節の可動域などの反応を見ていきます。
また、関節運動の操作手順や肢位の設定により感作(症状が強まる)や鑑別(症状がなくなる)反応を合わせてみることで、より情報を引き出していきます。
Slump Testを例に挙げて考えていきます。
下肢症状(痺れや痛み)を呈する患者をモデルとし、頸部・体幹を屈曲した状態で患側の膝を伸展した時に伸展可動域が健側と比較して小さい又は疼痛や痺れの再現を認める場合、陽性と捉えます。
この時、同肢位にて足関節背屈を加えることが感作操作となります(神経をより伸張する操作)。
また、同肢位にて頸部の伸展(神経のテンションを緩める)を加えることで鑑別も可能です。
仮に、足関節の背屈で症状が増悪し、頸部の伸展にて症状の軽減や消失、膝伸展可動域の増大などを認めた場合は、神経性の反応である可能性が高い所見と言えます。
※もちろんこのテストだけで判断することは危険なので、感覚検査や反射、MMT、各種ストレステストなど詳細な評価との整合性はとったうえで統合と解釈を行っていきます。
また、急性期で症状が強い方や、過敏性の高い状態の方にはニューロダイナミックテストは実施しない又は負荷を抑えたテストにするといったように適応なのかも判断しなければなりません。
まとめ
- 神経のつながり、貸し借りを意識!
- 神経は最初に動かした部分で最も緊張する!
- ニューロダイナミックテストだけでは判断できない!
次回は治療編!
神経系モビライゼーションの知識で末梢神経を診る【治療編】
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