てっちー
fukataro
神経系モビライゼーションとは、神経系の運動性や伸長性を改善することを目的として神経系を動かすことであり、神経系(伝導組織+結合組織)に操作を加えた時の影響を評価していくものです。
神経系を1つの連続体として捉えることが重要なポイントと言えます!
(脳から足先の末梢神経まで一本!)
「クリニカルニューロダイナミック」より引用
末梢神経を診るうえでの3つの要素
①メカニカルインターフェース(神経系の周囲にある組織)
筋、骨、腱、靭帯、筋膜、血管etc…
→神経系はこれらの組織から機械的影響を受ける。
骨棘、筋膜の瘢痕、靭帯の浮腫などは病的なメカニカルインターフェースと言えます。
②神経組織(神経そのもの)
1)伝導組織
インパルス伝導に関与する組織。末梢神経性疼痛の原因
2)結合組織
伝導組織を取り巻く組織。侵害受容性疼痛の原因
神経系は1)、2)が1つのユニットとして体内を走行し、末梢では神経叢や末梢神経となり、脊髄レベルでは神経根や脊髄神経となり、中枢では脳や脊髄となる。
③神経系に支配される組織
生理学的に神経系は支配組織に対して遠心性・求心性に作用する。
症状が支配組織に出ることもありますし、支配組織を動かすことで神経に影響を与え、反応をみるといったことも可能です(ex:大腿神経伸張テスト)。
「クリニカルニューロダイナミック」より引用
神経の機械的機能
①緊張
隣接する組織が伸びると神経系も伸び、緊張が生じる。
「クリニカルニューロダイナミック」より引用
②滑走
インターフェースに対して神経組織が動く。(McLellan & Murphy 1986)
1)長軸方向の滑走
緊張が高まった部位に神経を貸し出す機能
この機能のおかげで、神経系の緊張が分散され、特定の部位に緊張が生じない。
運動の順序によって伸張の程度、滑走方向は変化します。
「クリニカルニューロダイナミック」より引用
2)横断方向の滑走(偏位excursionとも言う)
神経系への圧迫・緊張を低下させる機能。
緊張が生じたときに、最短コースを走行しようとする。
インターフェースにより圧迫された時に偏位(回避)する。
「クリニカルニューロダイナミック」より引用
③圧迫
神経組織はメカニカルインターフェースの圧迫に対して適応(変形)する機能がある。
「クリニカルニューロダイナミック」より引用
(生理的圧迫の例)
・肘関節屈曲での尺骨神経圧迫(Gelbermanら1,998)
・脊柱の伸展/同側側屈により脊柱管、椎間孔狭小化
神経は阻血に弱い
神経は酸素不足に対してとても敏感であり、酸欠状態に陥ると神経機能は直ちに低下します。
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神経内血管は、安静時にはコイル状を呈する。神経が伸張された時にはコイルがほぐれるのみで血管は伸張されないため、通常の運動では神経への血流が維持される。(Sunderland1978,1991 Lundborg1998)
8%の伸張で神経からの静脈の流れが減少しはじめ、15%の伸張で神経内外のすべての血流が遮断される。(Lundborgら1973,Ogataら1986)
神経に問題がある患者(神経内浮腫、圧迫、炎症がある、瘢痕がある)では、機械的ストレスに対する閾値が正常よりも低下し、わずかな圧変化で病的症状が誘発される。また、圧迫された神経領域では、軽度の伸張によって異常が起こる。(Fujitaら1988)
肘関節屈曲位から肘関節を伸張すると、正中神経の周囲の組織は20%長くなる。(Millesi 1986)
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正常では近位(肩)および遠位(手関節)から神経組織が滑走し、神経の伸張は4‐6%に抑えられるため正中神経は正常に機能する。(Millesi 1995)
もちろん何らかの問題で滑走が起こらなければ、虚血による神経症状を引き起こします。
まとめ
- 末梢神経には、3つの要素がある (インターフェース、神経組織、神経に支配される組織)
- 神経には機械的機能がある (滑走、緊張、圧迫)
- 神経は阻血に非常に弱い
次回は評価について紹介!
神経系モビライゼーションの知識で末梢神経を診る【評価編】
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