【理学療法士必見】慢性疼痛患者の心理状態は破滅的思考である。

1年前から腰が痛いんです。

このような患者さんがきたら、みなさんどうしますか?

機能面を診ることは、もちろんですが、長期間痛みが持続している患者さんには精神面のケアも必須です。

そこで今回は、慢性疼痛の患者さんがどのような精神状態に陥りやすいか説明し、その評価や対処法を解説していきたいと思います。

慢性疼痛患者の心理状態「破局的思考」とは?

てっちー

今日は肩が痛いなーーー

てっちー

昨日野球をしたからか!

健康な人はこのように痛みを自覚した際に、客観的に判断し適切な対処行動をとることができます。

しかし、慢性疼痛の患者さんは、痛み・違和感が出た時に

判断行動が、おかしな方向に傾いたり

痛み感覚に、注意が集中してしまったり

痛みに関する考えに、意識が没頭してしまったりすることがあります。

そのような状態が、続くことを破局化的思考(catastrophizing)と言います。

 

問診で、破局化していることに気づいてあげるだけで、患者さんの心のモヤモヤが取れ、機能面の治療に集中できるようになります。

破局化3つの要素

  1. 反芻
  2. 無力感
  3. 拡大視

破局的思考はこの3要素から構成されます。

それぞれ解説していきます。

反芻(はんすう)

痛みのことが、頭から離れない状態で、

こころを痛みに乗っ取られているような状態のこと。

生活を送る際に、次から次へと不安を煽るような考え

沸き起こってはあふれていくような自動的、侵入体験のことです。

例)

おばあちゃん

歯磨き痛いだろーな

おばあちゃん

お米なくなったけど買いに行けるかなー(痛くなるだろーな)

無力感

痛みに対して自分では何もできないと信じている状態。

痛みに対しての努力もせず、自分の状態に対して、思考が混乱している。

意図せずにポジティブな情報を無視することがみられる。

例)

おばあちゃん

もう1年も腰痛い、このまま付き合うしかないのかな

おばあちゃん

腰痛い、姿勢悪いってよく言われるもんな

拡大視

痛みそのものの強さや、それにより起こりうる問題を

現実よりも多く見積もること。

面と向かって観察することの恐れから、自分の痛みをよく理解しておらず

痛みについて聞いても、漠然とした回答しか、できないことが多い。

将来起こりうる障害を、合理的には考えきらず、

もっと痛みが酷くなるのではないだろうか、動けなくなるのではないだろうか

などと言った恐れを抱く。

例)

おばあちゃん

腰の上の方が痛い、これは内臓の問題かも、癌かも、、、

おばあちゃん

とにかく痛い、ずっと痛い

おばあちゃん

このまま寝たきりになるかもしれないな

 

このように、破局的思考はこの3要素で構成されています。

痛みの恐怖-回避思考モデル(Fear-avoidance model)

(~ペインリハビリテーション~ より引用 )

上の図のように痛みの体験をした際に

破局的思考があると、痛み関連の不安過剰回避行動など

精神的に、機能的にも低下させ、不活動抑うつ能力障害などを

引き起こし、それが原因となってまた、痛みが出現してしまうという

悪循環に入ってしまいます。

これが慢性化する原因になるのです。

破局化の評価:疼痛破局的思考尺度(Pain Catastrophizing Scale:PCS)

破局化の評価として、13個の質問からなる評価法があります。

Pain Catastrophizing Scale (PCS)

 

まったくあてはまらない:0 あまりあてはまらない:1

どちらともいえない:2 少しあてはまる:3 非常にあてはまる:4

 

1.痛みが消えるかどうか、ずっと気にしている
2.もう何もできないと感じる
3.痛みはひどく、決してよくならないと感じる
4.痛みは恐ろしく、痛みに圧倒されると思う
5.これ以上耐えられないと感じる
6.痛みがひどくなるのではないかと怖くなる
7.他の痛みについて考える
8.痛みが消えることを強く望んでいる
9.痛みについて考えないようにすることはできない
10.どれほど痛むかということばかり考えてしまう
11.痛みが止まって欲しいということばかりを考えてしまう
12.痛みを弱めるために私ができることは何もない
13.何かひどい事が起こるのではないかと思う

 

反芻:1、8、9、10、11
無力感:2、3、4、5、12
拡大視:6、7、13

点数が高いことは、より破局的思考の傾向が強いことを表します。

この評価をすべてするかは別としても

質問項目に目を通し、問診で大体の推測を立てましょう。

対処法

頭に入れておきたいこと

まず、破局化がある患者さんと

ない患者さんを、見分けなければなりません。

破局化がない患者さんに行なっても、ただの自己満です。

そのために先ほど紹介した、破局化の評価(PCS)や問診で

破局化思考があるか、判断しましょう。

破局化思考があると判断しても

すぐに破局化に対してアプローチを行なってはいけません。

まず、精神面へのアプローチを行なっていく上で大事なことは

ラポール(信頼関係)を築くです。

破局化思考の対処法では、ラポールを形成できていないと

破局化していることに対しての説明を

好意的に受け入れてくれないことが、多々あります。

そこは注意しましょう。

どう対処していくか

簡単に言えば

反芻の強い患者さんには痛みについて考えないように、

無力感の強い患者さんには自信を持つように、

拡大視の強い患者さんには怖がらないようにすること

が目標です。

反芻の強い患者さんに対して

痛みについて考えないようにするのが目標ですが、

「痛みのことを考えないでください」と言っても

逆に気になってしまいます。

なので、痛みがあってもそのままにしておいて

それ以外の刺激に注目させることが重要です。

無力感・拡大視の強い患者さんに対して

患者さん自身が、痛みに対し無力でなく

痛みが予想していたほど、脅威でもないという

体験を繰り返し重ねて行くことが重要です。

その体験は、セラピストから提示するものであるため

患者さんに、信頼されている必要が、あります。

また、患者さん自身も、その体験に期待意義を感じて、

アクティブに取り組んでもらうことが大事になってきます。

おわりに

慢性疼痛の患者さんに対し破滅的思考にアプローチをすることは

痛みの恐怖ー回避モデルからの脱却を促し、慢性化する痛みを

取り除くための大事な要素だということがわかっていただけたでしょうか?

どうしてもPTは機能面に着目しがちですが、

破滅的思考などの精神面にアプローチすることも

患者さんにとっては大事なことです。

 

破滅的思考を見極めるために、問診力もつけましょう!

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