自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスで成り立っています。
よく、自律神経のバランスを天秤にたとえる人がいますが、実際はもう少し複雑です。
そこで今回は、交感神経と副交感神経のバランスについて、詳細にわかりやすく解説していきます。
目次
交感神経と副交感神経のバランス
自律神経のバランスは、はじめから交感神経と副交感神経がせめぎ合っているわけではありません。
自律神経に異常が起きるとき、交感神経の過剰な緊張から始まることが最も多いです。
その後は、以下の順番で進行すると言われています。
1,局所の交感神経緊張
繰り返された組織の損傷による疼痛や、外傷による症状により、局所の交感神経が緊張します。
2,全身の副交感神経緊張
組織の損傷や、外傷による症状が、1の反応のみで軽快すれば自律神経に複雑な問題は生じません。
しかし、1の状態が持続した場合、全身の副交感神経が緊張し、様々な症状(起立性低血圧・頸動脈過敏症候群・乾燥症状など)が出てくることがあります。
1に対する2の反応の例としては、注射の痛みに対する迷走神経反射があります。
3,全身の交感神経緊張
さらに2の状態が継続してしまうと、全身のバランスをとるために交感神経が緊張してきます。
すると、さらなる症状(動悸・頻脈・発汗・冷え性など)が生じやすくなります。
これらの1から3のサイクルを繰り返してしまっている患者さんほど、交感神経と副交感神経の症状が混在し、治療が難しくなってきます。
自律神経の治療はどう考える?
では、交感神経と副交感神経の症状が混在してしまっている患者さんに対して、どのようにアプローチしていけばいいでしょうか。
自律神経障害の根本は局所の交感神経緊張なので、緊張してしまっている交感神経異常に対してアプローチしましょう。
緊張した交感神経を緩めることができれば、交感神経の症状だけでなく、副交感神経の症状も軽快することがあります。
呼吸法から介入する
自律神経の評価の1つとして、バイタルサインがあります。
このバイタルサインを意識的にコントロールできれば、副交感神経を活性化させることができ、交感神経の緊張を和らげることができます。
バイタルサインを意識的にコントロールする手段の1つに、呼吸法があります。
安静時呼吸のうち、呼気時間を長くすることによって呼吸数を減らし、副交感神経の活動を促します。
また、腹式呼吸にはリラックス効果が高いことが報告されています。
具体的には、
- 呼吸数、心拍数の減少
- 収縮期血圧の低下による副交感神経の活性化
- 立位体前屈指床間距離の縮小など、筋緊張緩和による柔軟性向上
などが腹式呼吸の効果として報告されています。
筋肉から介入する
骨格筋や関節などの効果器からも自律神経に介入することができます。
骨格筋から自律神経に介入するための代表的な方法として、ストレッチが挙げられます。
ストレッチによって、大脳皮質活動と心臓自律神経系活動が弛緩し、その結果心拍数および血圧の低下が認められます。
関節から介入する
また、体幹の関節(仙腸関節・椎間関節・肋椎関節)に機能障害があると、交感神経が優位になると知られています。
(*ここでいう機能障害とは、関節に器質的病変がない正常関節ではあるが、関節の動きが異常をきたしている状態のこと。)
なので、体幹関節の運動機能を正常化することにより、自律神経系をコントロールすることができます。
体幹関節の動きを改善するための運動療法を実施しましょう。
心理面から介入する
心理面と自律神経が密接に関係していることはよく知られていますが、専門的な知識や技術を必要とするため、僕ら理学療法士や作業療法士が介入することは難しいです。
そこで、心理面に影響を与えるとされている心機能と運動耐容能から介入していきましょう。
この両方に負荷を与えるためには、エルゴメーターを活用します。
この時、無酸素性作業閾値強度(AT)などをふまえた上で、心機能と運動耐容能を上昇させましょう。
まとめ:リハビリを考える上で自律神経異常は外せない
臨床経験上、診断された疾病のほかにも、自律神経異常を認める患者さんは少なくありません。
自律神経のバランスが崩れた時の症状を見逃さずしっかり介入することを意識し、治療の選択肢に入れておきたいですね。
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