今回は、末梢神経を診る!シリーズでも書いたニューロダイナミックテストをいくつか紹介していきたいと思います。
目次
他動頸部屈曲(PNF)
方法
背臥位(必要に応じて低い枕を使用)。セラピストの頭側の手を患者の後頭部に置き、他側の手で胸骨上部を固定する。セラピストが設定したポイントまで他動的に頚椎を屈曲する。
正常反応
最終可動域での上位胸椎領域の伸張感
備考
・頸部屈曲により頸部の脊柱管が長くなり、脊髄に緊張が加わる。
・頸部の神経組織には緊張が加わり、インターフェースに対する滑走がみられる。
・頸部屈曲により脊柱管と椎間孔が拡大する。
・神経組織は、上位頚椎領域では尾側に、下位頚椎領域では頭側に、胸椎領域では頭側に滑走し、腰椎領域では緊張増加と頭側変位が起こる。脳は大後頭孔の方向に下方に引かれる。
腹臥位膝関節屈曲 (PKB)
方法
他動的に膝関節を屈曲し、大腿四頭筋に緊張を加える。
感作運動:股関節伸展
※股関節伸展を加えることにより神経系に対する検査の特異性は低下する。(Davidson 1987)
正常反応
大腿前面の伸張感。膝関節屈曲可動域は110°〜150°。可動域には個人差がみられるため、左右比較が重要となる(Davidson 1987)。
備考
患者は対称的な腹臥位とし、ベッドの孔を使用し、頚椎の回旋が起こらないようにする。このような孔がない場合は、患者の両手を額の下に置く。大腿を平行に位置させ、股関節の内転、外転が起こらないようにする。
SLR
膝関節伸展+股関節屈曲
感作運動:股関節の内旋・内転
足部の運動による鑑別
背屈/外返し(脛骨神経)
背屈/内返し(腓腹神経)
底屈/内返し(腓骨神経)
SLR
感作(股関節の内旋)
背屈/外がえし(脛骨神経)
背屈/内返し(腓腹神経)
底屈/内返し(腓骨神経)
正常反応
大腿後面のつっぱり感と伸張感(膝窩部、腓腹部上部にもみられることがある)。
可動域:50°〜120°(Lewら1985 ; Slater 1988)
備考
骨盤内で腰仙神経幹および神経叢を形成する腰仙部神経組織、坐骨神経、脛骨神経、それらの下腿、足部の枝の運動と機械的感受性の検査
スランプテスト
方法
座位で、治療ベッドの端に両膝の後面をつけ、大腿を平行にする。
1:胸・腰椎の屈曲(スランプ)—自動的に行う
2:頚椎屈曲—自動的に行う
3:膝関節伸展—自動的/他動的に行う
4:足関節背屈—自動的/他動的に行う
足関節の背屈は標準スランプテストの最終的な運動要素であり、坐骨神経と脛骨神経を介して腰仙椎神経根に緊張を加える。
5:組織鑑別
近位症状(例:腰椎部の症状)が誘発される場合→足関節背屈の解放
遠位症状(例:足部の症状)が誘発される場合→頚椎屈曲の解放
手順1〜4
足関節解放
頸部解放
正常反応
1:胸・腰椎屈曲—中位胸椎領域の伸張感
2:頚椎屈曲—変化なし
3:膝関節伸展—大腿後部、膝窩部の伸張感(この伸張感は上腹部にひろがることがある)。膝関節伸展中に、中位胸椎領域の伸張感が増減するか、変化しない。
膝関節伸展可動域:−30°〜0°
4:足関節背屈—大腿後部、膝窩部の症状が増加する。
5:頚椎屈曲の解放—大腿後部、膝窩部の症状が軽減し、膝関節伸展と足関節背屈の可動域が増加する。
感作運動:対側側屈、股関節内旋、内転、各末梢神経に対する足部の運動
備考
テスト中の各段階において仙骨が垂直位となるようにする。
正中神経動力学検査(ULTT1)
方法
背臥位(枕なし)。患者の母指を伸展し、正中神経の運動枝に緊張を加える(ピストルグリップ)。
1:肩甲上腕関節外転(90°〜110°)
2:肩甲上腕関節外旋
3:前腕回外と手関節伸展・手指(特にⅠ〜Ⅲ指)伸展
4:肘関節伸展
5:組織鑑別(手関節の解放または頚椎の対側側屈)
手順1〜4
組織鑑別(手関節の解放または頚椎の対側側屈)
正常反応
肘前面のつっぱり感。正中神経領域に痺れが見られることがある。これらの症状は頚椎の対側側屈で増加するが、同速側屈ではあまり低下しない(Kenneallyら 1988)。肩の前面の伸張感が見られることもある。肘関節可動域:-60°〜完全伸展(Pullos 1986)。
備考
頸部との間を走行する神経(正中神経のほか、橈骨神経、尺骨神経、腕神経叢、脊髄神経、頸神経根)が動くが、主として正中神経に作用するため、正中神経領域の症状が誘発される(Kenneallyら1988)。
正中神経動力学検査2(ULTT2a)
方法
背臥位(枕なし、肩をベッドから出すように斜めに臥床)
1:肩甲骨下制→神経と筋の緩みをとる(伸張はしない)
2:肘関節伸展
3:肩関節外旋+前腕回外
4:手関節・手指伸展
5:肩甲上腕関節外転(4までの運動要素で十分な情報が得られた場合は必要なし)
6:組織鑑別—肩甲骨下制を解放する(近位症状の場合は手関節、手指を解放する)。
感作運動—頚椎の対側側屈
手順1〜5
組織鑑別—肩甲骨下制を解放する(近位症状の場合は手関節、手指を解放する)
感作運動—頚椎の対側側屈
正常反応
ULNT1と同様の反応。肩甲骨下制を解放することにより症状が軽減することが多い。
可動域:肘関節伸展0°、外転0°〜50°
備考
ULTT1と同様、正中神経のほか、下位頚椎神経根、脊髄神経、腕神経叢にも動きが見られる。
橈骨神経動力学検査(ULTT2b)
方法
背臥位(枕なし、肩をベッドから出すように斜めに臥床)
1:肩甲骨下制—神経と筋の緩みをとる(伸張はしない)。
2:肘関節伸展
3:肩甲上腕関節内旋+前腕回内
4:手関節・手指屈曲
5:肩甲上腕関節外転
6:組織鑑別
6a:近位症状—手関節屈曲の解放
6b:遠位症状—肩甲骨下制の解放
感作運動:頚椎の対側側屈
手順1〜5
6a:近位症状—手関節屈曲の解放
6b:遠位症状—肩甲骨下制の解放
感作運動:頚椎の対側側屈
正常反応
肘関節外側〜前腕のつっぱり感。手関節後方の伸張感みられることがある。肩甲骨下制を解放することにより肘関節の症状が変化するが、手関節症状は必ずしも変化しない。
可動域:肩甲上腕関節外転は平均40°〜45°(Yaxleyら 1991)。かなり個人差がある(0°〜50°)。
備考
肩甲骨下制要素を加えることによって、頚椎神経根、関連する脊髄神経、腕神経叢に機械的力を作用させる。橈骨神経は上腕骨のまわりを螺旋状に走行するため、内旋要素を加えることによりストレスが加わる。回内、手関節、手指運動により橈骨神経の遠位部にストレスが加わる。
尺骨神経動力学検査(ULTT3)
方法
背臥位(枕は使用しない)
1:肩甲帯下制—神経および筋の緩みをとる(やや下制するのみで伸長しない)
2:手関節・手指伸展/前腕回内
3:肘関節屈曲
4:肩甲上腕関節外旋
5:肩甲上腕関節外転—セラピストのベッド上に置いた手を支点にして歩くようにする。
6:組織鑑別—セラピストのベッド上に置いた手の手関節を軽度屈曲し、肩甲骨下制をわずかにリリースする。
感作運動:(a)頚椎の対側側屈、(b)橈屈
手順1〜5
6:組織鑑別—セラピストのベッド上に置いた手の手関節を軽度屈曲し、肩甲骨下制をわずかにリリース
感作運動:(a)頚椎の対側側屈
感作運動:(b)橈屈
正常反応
上肢全体(特に尺骨神経領域)の伸張感、痺れや灼熱痛がみられることもある。通常、肩甲骨下制を解放することにより、肘関節と手関節の症状が変化する(Flanagan 1993)
可動域:肩甲上腕関節外転にはかなりのばらつきがある(30°〜90°)。
備考
腕神経叢、頚椎神経根の検査に加え、主として尺骨神経の変位をもたらす。この検査は腕神経叢の下方の神経幹および、より尾側の神経根のストレスを増加させる。
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