痛みを考える①に引き続き痛みについて考えていきます。
痛みと感情
痛みは心理的な状態であるという説明をしましたが、これは科学的にも調査されており、疎外感を与えるような体験をさせる前後(ようは仲間外し)に同一箇所に同一の強度の物理的刺激を加えた場合、体験後では主観的疼痛強度が上昇するという結果が出ています。この時、妬みの感情に関与する前帯状回という脳の領域の活動が活発になることが分かっています。
また、妬みの感情が強い人ほど、他人の不幸に対して腹側線条体(報酬系を構成し、快楽中枢である)の活性化を認めるみたいです。劣等感や妬みの感情は疼痛の感受性を強め、逆に劣等感の軽減がなされれば、心理的な疼痛を軽減できることが分かってきています。
急性痛と慢性痛
冒頭でも少し書きましたが、急性痛は痛覚受容器の興奮を示し、生体における警告信号としての意味を持っています。しかし、慢性痛は主に中枢神経の可塑的異常を示し、警告信号としての意義はないと考えられています。
急性痛は侵害刺激や炎症状態などメカニカル、ケミカルなストレスが要因の大半を占めているのに対し、慢性痛は心理社会的なストレスが大きく影響しています。
(「リハビリテーションのための脳・神経科学入門」より引用)
慢性痛への変遷
まずは損傷によって急性痛が発生します。これは組織損傷に対する防御的な反応です。
ダメージを負った組織へのストレスを減らすために身体は損傷肢の運動を抑制します(力が入りにくくなったり、筋肉の緊張が高くなって関節が固まったようになったり)。
また、疼痛の学習(こうすると痛いといった経験の繰り返しなど)などによって疼痛が予期されるような動作や肢位、環境などを回避するような習慣が形成されてきます(学習生不使用)。
こうして損傷肢を使わなくなったり、装具や三角巾などで固定する期間が長くなると、その肢の身体認知が落ちていきます。そういった負の連鎖は心理的にも影響を受け、損傷肢の嫌悪感や苛立ちが募り、社会からの排斥感などのネガティブな感情が強くなったりすることで慢性痛へと変遷していきます。
(「リハビリテーションのための脳・神経科学入門」より引用)
まとめ
・劣等感や妬みといったネガティブな感情は痛みの感受性を高める。
・急性痛に比べ、慢性痛では心理社会的要因が痛みの原因を占める割合が多くなる。
・過度な疼痛回避行動や学習性の不使用は、損傷肢の身体認知を低下させ、慢性痛への変遷の要因となる。
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