整形外科医や理学療法士・トレーナーは、患者さんに痛みがあった場合、どこが損傷して痛みを引き起こしているのかを知るために、あらゆる方法を使って損傷の部位を特定します。
その方法の1つが、整形外科的テストと呼ばれるもの。
この記事では、膝関節の整形外科的テストを紹介します。
目次
- Anterior Drawer test(前方引き出しテスト)
- Lachman test(ラックマンテスト)
- Posterior Drawer test(後方引き出しテスト)
- Valgus Stress test(外反ストレステスト)
- Varus Stress test(内反ストレステスト)
- Apley’s Compression test(アプレー圧迫テスト)
- Apley’s Distraction test(アプレー牽引テスト)
- Mc Murray’s test(マックマレーテスト)
- Patella Ballottement test(膝蓋骨跳動テスト)
- Patella Grinding test(膝蓋骨圧迫テスト)
- Patella Apprehension test(膝蓋骨不安感テスト)
Anterior Drawer test(前方引き出しテスト)
(感度:55~90% 特異度:85~100%)
このテストは、前十字靭帯の損傷を調べるテストです。
- 患者さんは背臥位に
- 膝関節を90°屈曲し、脱力してもらう
- 脛骨を把持し、前方に引き出す
判定基準
健側と比較して前方に大きく引き出された場合、陽性です。 後十字靭帯損傷でみられる「sagging徴候」に注意
後十字靭帯が損傷していた場合、脛骨が後方へ落ち込むsagging徴候がみられます。
この状態で前方引き出しテストを実施すると、もともと後方に落ち込んでいた脛骨が大きく前方へ移動するように感じてしまうため、注意が必要です。
Lachman test(ラックマンテスト)
(感度:65~95% 特異度:90~100%)
このテストは、前十字靭帯の損傷を調べるテストです。
- 患者さんは背臥位に
- 膝関節を20~30°屈曲し、脱力してもらう
- 脛骨を把持し、やや外旋させながら前方へ引き出す
判定基準
健側と比較して前方に大きく引き出された場合、陽性です。
Posterior Drawer test(後方引き出しテスト)
(感度:95% 特異度:95%)
このテストは、後十字靭帯の損傷を調べるテストです。
- 患者さんは背臥位に
- 膝関節を90°屈曲し、脱力してもらう
- 脛骨を把持し、後方に押し込む
判定基準
健側と比較して後方に大きく押し込まれた場合、陽性です。
Valgus Stress test(外反ストレステスト)
(感度:85~95% 特異度:-%)
このテストは、内側側副靭帯の損傷を調べるテストです。
- 患者さんは背臥位に
- 膝関節に外反ストレスをかける
- 次に膝関節20~30°屈曲位でも実施する
判定基準
健側と比較して緩みや痛みが出現した場合、陽性です。
Varus Stress test(内反ストレステスト)
(感度:25% 特異度:-%)
このテストは、外側側副靭帯の損傷を調べるテストです。
- 患者さんは背臥位に
- 膝関節に内反ストレスをかける
- 次に膝関節20~30°屈曲位でも実施する
判定基準
健側と比較して緩みや痛みが出現した場合、陽性です。
Apley’s Compression test(アプレー圧迫テスト)
(感度:95% 特異度:85%)
このテストは、半月板の損傷を調べるテストです。
- 患者さんは腹臥位に
- 膝関節を90°屈曲する
- そのまま垂直に圧迫する
- その後、内旋位と外旋位でも実施する
判定基準
圧迫時に痛みが出現した場合、陽性です。 MEMO
内旋位の疼痛は外側半月板、外旋位の疼痛は内側半月板の損傷がそれぞれ疑われます。
Apley’s Distraction test(アプレー牽引テスト)
このテストは、側副靭帯の損傷を調べるテストです。
- 患者さんは腹臥位に
- 膝関節を90°屈曲する
- そのまま垂直に牽引する
- その後、内旋位と外旋位でも実施する
判定基準
牽引時に痛みが出現した場合、陽性です。 MEMO
内旋位の疼痛は外側側副靭帯、外旋位の疼痛は内側側副靭帯の損傷がそれぞれ疑われます。
Mc Murray’s test(マックマレーテスト)
(感度:95% 特異度:85%)
このテストは、半月板の損傷を調べるテストです。
- 患者さんは背臥位に
- 膝関節を屈曲・外旋・内反位にする
- 関節裂隙を触診しながら、膝関節に軸圧をかけ伸展していく
- 次に膝関節を屈曲・内旋・外反位にする
- 関節裂隙を触診しながら、膝関節に軸圧をかけ伸展していく
判定基準
進展していく時に痛みが出現した場合、陽性です。 MEMO
屈曲・外旋・内反位から伸展したときの痛みは内側半月板、屈曲・内旋・外反位から伸展したときの痛みは外側半月板の損傷が、それぞれ疑われます。
Patella Ballottement test(膝蓋骨跳動テスト)
このテストは、浸出液の有無を調べるテストです。
- 患者さんは背臥位に
- 脱力してもらい、膝蓋上嚢に溜まっている浸出液を遠位に移動させる
- そのまま膝蓋骨を上から圧迫する
判定基準
健側と比較して膝蓋骨が跳ね返ってくる感覚があった場合、陽性です。
Patella Grinding test(膝蓋骨圧迫テスト)
このテストは、膝蓋大腿関節の障害を調べるテストです。
- 患者さんは背臥位に
- 膝蓋骨を圧迫しながら、上下左右に動かす
- これを屈曲0°、30°、60°、90°でそれぞれ行う
判定基準
ゴリゴリとした音や痛みが出現した場合、陽性です。
Patella Apprehension test(膝蓋骨不安感テスト)
このテストは、膝蓋骨外側亜脱臼の有無を調べるテストです。
- 患者さんは背臥位に
- 膝蓋骨を外側に移動させる
判定基準
膝蓋骨を移動させた時に不安感を訴えた場合、陽性です。
* これをきっかけに、感度・特異度も理解しよう!
【世界一わかりやすい】理学療法評価における感度・特異度
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