fukataro
患者さんのリハビリをする時、必ず最初に問診をすると思います。
この問診、実はめちゃくちゃ大事なんです。
海外の治療家などは、平気で30分以上問診をします。
リハビリにおいて、とても重要な問診ですが、そんなに何を聞いていいかわからないですよね。
そこでこの記事では、個人的な問診をする上での考え方を紹介します。
問診の目的
問診の主な目的は、治療方針決定のための情報収集です。
基本的には、その人の問題を解決するためのヒントを、より多く集めていくことになります。
もちろん危険信号(評価・治療において大きなリスクがあるのかどうか)のケアには留意しなければなりませんし、ラポール形成も含まれてきます。
*危険信号ってなに?という方はこちら
リハビリする前の危険信号を見逃すな!診断学的トリアージまとめ全体像の把握
問診はとても重要な評価ですし、全体像を把握するツールとして有用です。
患者及びその問題点を理解し、治療を成功に導くために、セラピストは関与すると思われる身体組織や関連した病理学を含む身体の診断学的な可能性について考慮するだけではなく、これらの問題点が患者の生活に与える影響や、患者とそれを取り囲む他者が問題点とその治療について理解しているかなど、人の健康に関連すると思われるあらゆることに頭をめぐらせる必要がある。
〜マニュアルセラピーに対するクリニカルリーズニングのすべて より〜
このように、個人的に良いと思っている本にも、全体像を把握することの必要性が書いてあります。
よく見かける全体像
学生発表でのレジュメに「全体像」という欄があることがほとんどですが、
「コミュニケーションは良好でPTSの評価にも協力的である。」
って書いてあるのが大多数な気がします。
これはちょっと違う気がするというか、患者さんのイメージが湧きません。
例えば、
「本症例は39歳の女性高校教諭であり、6ヶ月に及ぶ腰部と尾骨部の疼痛を有している。感覚脱失や異常感覚、直接的な外傷等の受傷機転もなく、内科系の健康状態は良好である。特に座位保持に困難感を訴えており、やや神経質な印象である。」
という書き方がイメージ湧きやすいのでは?
レジメにおける全体像はスペースの問題もあるかもしれませんが、かなり端的にでも症状および経過、生活状況や印象などを載せるほうが有用なものになると思います。
問診で何を聞く?
てっちー
と悩む学生さんも多いはず。
カルテ情報やDr.所見・画像所見などから、事前にある程度の項目は決まるかもしれませんが、後はやりながら考えて質問していくのが実際だと思います。
学生さんは難しく感じるかもしれませんが、実際の臨床でもそうです。
問診の具体例
例として、私的に臨床で聞く項目をいくつか挙げてみます。
- 何に困っているか
- 受傷機転はあるか
- 全身的な健康状態、既往歴、服薬等の状況
- 罹患期間と経過(他院受診歴があればそれも)
- 他院で行った治療、受けた説明 良かった治療 悪かった治療
- 症状(本人がどう考えているかも含めて)
- comparable or incomparable(症状を再現できる動作などがあるかどうか)
- ストレスになっているもの(仕事・家事・介護など)といった関連因子の把握
何に困っているか
まず大切なのは、そもそも何を目的に病院を受診したのか?
これを捉えないとはじまりません。
高いところに手がとどかない
趣味のゴルフができない
患者さんの目的によって、初めに目指すべき目標が変わってきます。
受傷機転はあるか
どこが損傷したのかなどを想像するために、受傷機転や症状の出る動作、時期などがあるのかを探っていきます。
その情報から想像したことをもとに考えると、より詳細に評価するための項目が浮かんできます。
罹患期間と経過(他院受診歴も)
罹患期間や経過を知ることでも、慢性期、急性期、増悪期、寛解期などを想像することができ、治療の方針の一助となるでしょう。
さらには全身的な健康状態や服薬等を確認しておくことで、別の問題(例えば糖尿病)による症状も混在している可能性の検討ができます。
リスクの考慮等にも活かせると思います。
また、他の病院や他の治療院を受診した経験がある人もいると思います。
そういった場合はそこでされた説明や受けた治療なども聞いておくべきだと思います。
なぜなら、そこでされた説明がその人の病態認識を形成している場合があるから。
また、受けた治療で良かったもの、悪かったものを聞くと仮説をたてるヒントになりますし、本人があまり良いイメージを持ってない治療を第一選択から外すこともできます。
例えば、牽引治療して悪くなったと思っている人に牽引治療を施行して良い反応を引き出すのはハードルが高いです。
全身的な健康状態、既往歴、服薬等の状況
また、可能な範囲でその人の健康状態に関連するかもしれない因子を探っていきます。
場合によっては家事や仕事、介護といったものが身体的・精神的なストレスとなっているかもしれませんし、セラピストとして介入の余地があるかもしれません。
(動作・環境設定の工夫などの提案、介護サービスなどの紹介、傾聴など)
問診で意識していること
基本的な問診内容は、把握できましたか?
ここからは、さらに詳しく正しい情報を手にいれるため、問診をするときの心構えを紹介します。
大まかに4つだけ紹介。
- 誘導しない
- なるべくOpen question
- 自身と患者との表現のギャップがあることを忘れない(抽象度の高い返答は特に)
- 振る舞いや表情も含めて想像を膨らませる
まず気をつけたいことは、誘導尋問をしないこと。
自分の仮説にフィットするように誘導して質問すると正確な情報が得られない可能性や強引なアセスメントになってしまう場合があります。
学生さんには少し酷かもしれませんが、知らず知らずのうちに論文等で見た例などに当てはめてしまう、といったことはよく起こり得ることです。
論文等を参考にするのは良いことだと思いますが、バイアスのかかった評価になってしまったり視野が狭まりすぎたりと、リーズニングエラーの原因となることもあります。
あくまで素の情報を得るように心がけ、常に自分を疑う視点を持ちましょう。
質問するときに、YesかNOで答えるように聞くClosed questionも使いますが、Open questionで聞くことで患者本人の伝えたいことを上手く引き出すことにつながることがあり、良い情報を得ることができます。
また、リハビリテーションは患者とセラピストの協同作業なので患者が受け身になるような一方通行にならないようにするためにも良いでしょう。
臨床に出てからも忘れてしまいがちですが、患者本人の感覚とセラピストの感覚は違うと念頭に置いておくほうが良いでしょう。
できるだけ具体的に聞いて、表現を誤認しないようにする努力も必要です。
また、問診や検査等の評価時には、患者の一挙手一投足に目を配り、表情や仕草からも情報を拾うようにしましょう。
もちろん、表情や言葉使いだけで判断はできないので、詳細な評価で整合性をとることは必要です。
問診をしながら何を考えていけば良いのか
卓越したセラピストは問診の情報や症状および現象に対して考えられる量が圧倒的に違います。
知識が広く深いほど、立てられる仮説が多くなるので、問診で聞くポイントが変わってきます。
あとはそれを絞っていくために、詳細な評価や試験的な治療へと進めていくのが、臨床での個人的な組み立てです。
実習中の学生さんは知識量が足りないのはもちろんだと思いますが、仮に実習期間中に知識をそれほど増やせなくても、何の知識を増やしていく必要があるのかといった方向性が見えてくれば素晴らしい成果だと思います。
まとめ:評価は、問診が8割
問診は、評価する上での先発投手のようなもの。
問診によってその後の展開の組み立てが決まってきますし、問題解決の大きな足がかりとなります。
とにかく考えながら評価を進める。
初めは難しいかもしれませんが、根気強く挑戦しましょう。
*問診を学んだあとは、検査項目決めをマスター!
臨床実習で使える!理学療法評価・検査項目を決めるときの考え方
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