前回の記事で、仙腸関節の解剖学、運動学について書きました。
仙腸関節を診る【解剖・運動学編】今回はそれを頭に入れた上で、評価・治療に対して、知っていて欲しいことを、書いていきます。
目次
知ってて欲しい評価と使い方
どこの部位でも同じですが、やっぱり大事なのは問診。
※問診で聞くこと、意識することはこっちに書いてます。気になったらあとで見てね。
【問診が8割】理学療法評価で重要な問診の考え方
特に仙腸関節かなっと疑った時に聞いておきたい点は
- どの動作で痛みが出るのか
- 楽になる動作、肢位はあるのか
この2点はしっかり把握しましょう。
仙腸関節が関係している場合は、仙腸関節のニューテーション、カウンターニューテーションの運動のうち、
どちらかが過度に出ている、どちらかの動きだけ出ない、または非対称になっている
ということがほとんどです。
疼痛動作、寛解肢位より仙腸関節の状態を推測しましょう。
問診で仙腸関節かなっと思ったら
次にやることは、整形外科テストです。
整形外科テストでは、問診で聞いた症状が、整形外科テストにて
再現性があるか、確認するために行います。
仙腸関節のテストで、再現性がない場合は、違う部位の整形外科テストをしたり、
異なる場所にストレスをかけてみて、再現性を取っていきましょう。
仙腸関節の整形外科テストは、大きく分けて2パターンあります。
1つめは、仙腸関節に痛みがあるかを判断する
仙腸関節性疼痛の整形外科テストです。
2つめは、仙腸関節に問題があるかを判断する
仙腸関節機能不全の整形外科テストです。
それぞれ解説していきます。
仙腸関節に痛みがあるのか
仙腸関節に痛みがある場合、痛みが出現する場所は
仙腸関節の関節面、仙腸関節前方の靭帯、仙腸関節後方の靭帯
のどこかに出ていることが、ほとんどです。
どこに痛みが出ているのか推測しながら仙腸関節性疼痛のテストを、行なっていきましょう。
1.仙腸関節前方引き離しテスト
2.仙腸関節圧迫テスト
3.仙骨剪断テスト
4.大腿剪断テスト
5.ゲンスレンテスト(股関節屈曲側)
6.ゲンスレンテスト(股関節伸展側)
この6つのテストをやってみて
1~4のテストの内2つが陽性なら、感度94% 特異度78% で
仙腸関節疼痛と診断ができ、6つのテストがすべて陰性の場合、
仙腸関節の問題を除外できるとされています。
~理学療法ガイドライン第1版,16.徒手的理学療法診療ガイドライン より~
※仙腸関節の整形外科テスト詳しくはこっち
仙腸関節の整形外科的テストまとめ詳しいやり方、どこにストレスがかかるのか、ワンポイントアドバイスなどまとめています。
※感度、特異度がわからない人はこっち
【世界一わかりやすい】理学療法評価における感度・特異度感度、特異度を理解することで整形外科テストがより武器になります。
仙腸関節に機能不全があるかどうか
仙腸関節の機能不全で、仙腸関節に痛みがある患者さんもいれば
仙腸関節の機能不全で、仙腸関節以外に痛みが出ている患者さんもいます。
この仙腸関節機能不全の整形外科テストは、問診でここが原因と、思ったことを
確かめるために行いましょう。
難しくいうと自分の推論が正しいのかどうか見極める1つの材料にしましょう。
1.立位前屈テスト
2.座位での上後腸骨棘の触診
3.背臥位-長座位テスト
4.腹臥位膝屈曲テスト
この4つのテストの内3つ以上で陽性の場合
感度82%、特異度88%で 仙腸関節機能障害と考えられる。
~理学療法ガイドライン第1版,16.徒手的理学療法診療ガイドライン より~
仙腸関節周囲は色々な組織があり判別が難しい
仙腸関節は、L5/S1などの椎間関節や、脊柱起立筋群、股関節外旋筋など、、、
他に痛みを出す可能性がある部位が、近くにたくさんあり、悩むことが多いと思います。
そこで、仙腸関節の痛みや機能障害を疑ったなら、
関節面、関節の運動をしっかりとイメージしながら
整形外科テストを行い、他の部位と、判別していきましょう。
また、仙腸関節+腰椎の問題や仙腸関節+股関節の問題はとても多いです。
仙腸関節ばっかりに捉われないよう、他の関節も頭に入れときましょう。
オリジナルのテストを
しっかりとした方法で、整形外科テストができるようになったら、
ただ単に、整形外科テストをやるのではなく、
脊柱のアライメントを変えてみたり(腰椎の前弯を減少etc…)
二関節筋の影響を考えてみたり(膝屈曲etc…)
ストレス方向を変えてみたり(ニューテーション方向に圧迫etc…)しながら
オリジナルのテストをしてみましょう。
それによって、症状が変わるのであれば、治療の際の大きなヒントになります。
知っていて欲しい治療の考え方
仙腸関節を治療する上で、知っていてほしい考え方を紹介します。
安定性を高めることが治療をする上での目標
ここでいう安定性とは,
硬めるのではなく必要不可欠な機能を継続しつつ
コントロールしながら維持させること
これを作るのが目標になります。
そのために考えることは2つ
フォームクロージャー機能と、フォースクロージャー機能です。
それぞれ解説していきます。
フォームクロージャー機能とは
関節の構造によって負荷がかかった時に安定させる機能ことです。
仙腸関節でいうとニューテーションになるべき肢位で、
しっかり適度なニューテーションを保てているか
ということが、大事になります。
そのためには
- 頚椎、胸椎、腰椎含めた脊柱のアライメントはどうか?
- 腸骨の前傾、後傾はどうなっているか?
- 腸骨のアウトフレア、インフレアはどうか?
- それらの左右差はどうか?
がポイントです。
フォースクロージャー機能とは
筋などの動的構造体で負荷がかかった時に、安定させる機能のことです。
研究的には、大腿二頭筋、大殿筋、脊柱起立筋を収縮させる、
腹部を引き締めるという指示が、仙腸関節の安定性を高めると言われています。
があくまでも自分で評価して、
目星をつけて、筋トレ、再評価して行くのがベストです。
ポイントは
- 筋が働ける環境が整っているのか
- 筋力はあるのか
- 収縮して欲しいところで収縮するのか
をみていく必要があると思います。
フォームクロージャー:静的構造体による安定化
フォースクロージャー:動的構造体による安定化
良い治療をするためには
問診を含めた評価が、とても大事になってきます。
評価をして、
仙腸関節のアライメントはどうなっているのか(フォームクロージャー)
筋はうまく働いているか(フォースクロージャー)
を診ることが仙腸関節を治療するための第一歩と言えるでしょう。
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